世界の大勢を全く鑑みずに海外旅行してみた話~序
昭和天皇が「もうこれは無理」と賢くも御聖断をお下しになられ、
「朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク」*1
と8月15日に玉音放送を流して70年後。
すっかり平和ボケした日本国民の一人である私は、世界の大勢を全く鑑みず、2015年11月13日のパリ同時多発テロで緊張が走るヨーロッパに旅行に行った。
行先はイタリア。
愛の国イタリア。
太陽の国イタリアである。
一緒に向かったのは私の夫であるベイマックス似の日本人男性(以下ベイ夫)。
ベイ夫が嫌だと言えば中止も吝かではない、むしろ妥当であると感じていたのだが、
「テロには屈しない」
という無暗矢鱈にカッコイイ台詞とともに決断してしまわれたので、1980年代の少年ジャンプ魂を受け継ぐ者として、うっかり決行してしまった。
その時の独断と偏見による観察結果を綴ってみる。
事の起こりは2015年初夏。
私は日本の地方都市の古臭い社宅で足をバタバタさせながら駄々をこねていた。
「イタリアに行きたい!イタリアに行きたい!」
そもそも家庭婦人(←になるべく躾を受けていないので、専業主婦というポジションにも適応することが出来ず、社宅妻としても落第で、当時日雇いで通っていたパート仲間にも馴染めず、フラストレーションを溜めていた。
ある一定年齢以上の道民がフラストレーションがたまった時の対処法と言えば、一つしかない。
そう、「水曜どうでしょう」*2を観るのである。
ちょうどその頃、某地方局で「水曜どうでしょう」の「ヨーロッパ20か国完全制覇~完結編」が放送されており、私の数少ない心の慰めであった。
そして、思いついたのである。
「イタリアへ行こう!イタリアへ行って、世界遺産を観て、緩んで来よう」
私はそれを心の支えに日雇いに励んだ。
そして、イタリア旅行ツアーのパンフレットを見ては現実逃避することで、日々をやり過ごしていたのである。
そして、お値段も手頃で旅行日程も都合の良いツアーを見つけた。
行先はミラノ→ベネツィア→フィレンツェ→ピサ→ローマ→ナポリ→バチカン。
北から入って南から出る、よくある某有名旅行社の添乗員つきツアーだ。
そりゃそうである。
英語はともかく、知っている現地イタリア語が
「チャオ」
「グラッツィエ」
「ペルファボーレ」
しかない、ダメな夫婦が単独で行くのは正真正銘の自殺行為だ。
馬鹿が海外で無理をしてはいけない。
安全にお金をケチってロクな結果が出た例が人類史上あっただろうか?
いや、ない(反語表現。
2013年末に日本中の笑い者になってしまったエクアドルの事件も*3、結局は被害者男性の慢心によるところが大きかった。
命の価値も安全も結局は相対的なもの。
我が日本は1977年のダッカ事件における福田赳夫首相以来、「人命は地球よりも重い」が(一応の)国是となってはいるが、世界にはたった10ドル、20ユーロのために殺人が起こる地域だって存在するのだ。
自分の力が及ばないなら、お金で能力を持つ人のヘルプを買うしかないのである。
結論として、イタリアでは大変快適な旅を楽しむことが出来た。
しかし、安全を買っておいて良かったと心の底から思ったことも事実である。
その経緯なども、次の記事で書いてみようと思う。
*1‥玉音放送 - Wikipediaより引用。
*2‥公式サイトはこちら。