うみこの日記

自称主婦のどうしようもない独り言。もしくは愚痴など。

世界の大勢を全く鑑みずに海外旅行してみた話~承

私が言い出した今回のイタリア旅行だが、同行者のベイ夫が一つだけリクエストを出した。

「折角ならレオナルド・ダヴィンチの最後の晩餐を観ようよ」

というわけでミラノ観光があるパックに申し込んだのだが、折悪くパリでテロが発生し、イタリア経済の中心地であるミラノは(当然ながら)厳重警戒態勢に入ってしまう。

正直私はどっちかっていうとダヴィンチよりミケランジェロが好きという嗜好なので、この際プランの変更も辞さない構えであった。

ではあるのだが、いつも私の好きにさせてくれるベイ夫が「行きたい行きたい」と珍しく主張したので、そのままプラン変更をせずに日本を発ったのである。

 

イタリア二日目、無事にミラノ観光に出た我々一向だったが、ヴィット―リオ・エマヌエーレ二世のガレリアを抜けた広場には武装した兵士たちがウヨウヨいた。

スカラ座広場もガレリアも警備されていたが、イタリアが誇るミラノ大聖堂は違う。

自動小銃をぶら下げ、迷彩の軍服を着たガチの軍人が警備し、入場検査も行っていた。

f:id:umin_chu:20160112234024j:plain

 

お仕事中の兵士をあまり接写するのも失礼なので遠めの写真しかないのが、50メートルおきに兵士が巡回していて、大きな荷物を持っている人は職務質問されていた。

もちろん私も大聖堂内を見学するのに、持ち物検査を受けなくてはいけない。

自動小銃ベレッタAR70/ 90を肩から掛けた重装備の兵士にかばんの中身とポケットの中身を見せた。

お気づきのことと思うが、写真に写っている猫のぬいぐるみ「ねこ太郎」を私は常に携帯している。

パスポート、チケットと共に当然ねこ太郎も見せなくてはいけない。

不審物に思われたら嫌だな~、まあ不審物チェックされてもX線検査してくれれば、単なる布の塊であることは分かるし、大人としてどうかとは思うが、やましいことは何もない!

と強気で積極的に見せたのである(ヤケクソ、もしくは捨てバチともいう。

すると…

「Oh,Japanese Cat」

と何故か英語で言ってねこ太郎の腹を押し、ミャオミャオ鳴らして遊び始めたのである…。

…。

……。

うん、分かるよ、分かる。

いるかいないか分からないテロ犯を24時間警戒して、観光客に嫌な顔されて持ち物検査するの、辛いよね。

きっと観光客対応の即席教育を受けさせられて、お互い通じてるんだか通じてないんだか分からない英語でしゃべってると、情けなくなるよね。

でもさ、私がどんなに頭が悪そうな平たい顔族*1の女であっても、一応不審物かもしれないもので遊んじゃアカン。

万が一私がズル賢い女で、ねこ太郎に爆弾でも詰めていたらエライことである。

何しろ警備しているのはイタリアの至宝の一つ、ミラノ大聖堂なのだから。

世界遺産というだけではなく、大聖堂が支える観光産業はミラノの基幹産業の一つでもある。

その重要な場所を守っているという気迫と緊張感が、少なくとも私にはあまり伝わってこなかった(控えめな表現。

警備にあたっている兵士の方も、ベテラン兵士は少なく、若いお兄ちゃんお姉ちゃんばかり。

もちろん緊急事態だし、まだ入隊して間もない新兵までかき集めたんだろうことは容易に想像される。

そう「武装警察や軍隊による警備を」などと世間は簡単にいうが、人材を集め教育し使えるようにするには一定の時間がかかるのだ。

何処の国も財政難で軍事費は一番に抑えたいところであるし、不必要な軍事力の増大は外交上の問題にすらなりうる。

余剰戦力など持っているはずもなく、急に国内警備に十全な人材を配置できるはずはない。

おまけにイタリアは世界遺産に認定されているものだけで51か所もある。

ほぼ町全体が世界遺産に認定されているものもあるし、認定はされていないが世界遺産級の美術品や構造物が納められた博物館なども数えきれないほどあるのだ。

重要な観光資源でもあり、それゆえに外国人観光客も多く、警戒も保護もしなくてはいけない。

本当の意味で「猫の手も借りたい」状態なのだろう。

それが端的に表れた警備状態であった。

その兵士はにっこり笑ってロクすっぽ検査せずに私を大聖堂に入れてくれた。

入隊したての新兵だったのかもしれないし、人の好い臨時雇用の兵士だったのかもしれない。

なんにせよ、イタリアのような経済的に厳しい観光大国にはテロ対策など土台が無理な話なのだと再確認させられたミラノ訪問であった。

 


 

*1‥漫画「テルマエ・ロマエ」参照。

世界の大勢を全く鑑みずに海外旅行してみた話~起

イタリア行きを決めた当時、世界がそれほど平和だったかというと、そうではなかった。

2015年1月7日にはシャルリ・エブドによるムハンマド風刺と、それに対する報復テロ事件*1が起こっているし、さらに2月1日には湯川・後藤両氏がISISに殺害される事件*2も起きている。

ギリシャでは経済危機で国家経済が事実上破たんしているし*3、そのギリシャとトルコを経由してのシリア難民流入*4が喫緊の大問題だ。

真っ当な人間なら、表面上はとりあえず平和で、衣食住に不足なく、安全が保障された日本からは出ない。

2015年の夏は日本も安保問題で久方ぶりの大規模デモなどが起きていたけれども、人が死ぬわけでもなければ軍隊が出動するわけでもなく、さらに軍の将校による要人殺害が起きるわけでもない。

しかし、私は見てみたかった。

全世界に「われらの信じる正義こそ真実」と臆面もなく流布した元祖であるヨーロッパ世界の、その文化的嫡流であるイタリアが、この危機にどう動いているのか。

まあ、その、なんだ。

ベルルスコーニみたいなヤツをずっと国政の要職につけ続けたり、「ギリシャの次に破たんするのはイタリアかスペインか」なんて言われるほど経済状態も悪い国ではあるが、腐っても「偉大なるローマ帝国」の末裔である。

先進国でもあるし、EU加盟国でもある、危機に対して「それなりに」は対処してるんじゃね?と私は多少期待した。

…が、私の期待はイタリアの玄関口で完璧に打ち砕かれることになる。

 

アリタリア航空の直行便に乗れたとはいえ、12時間近いフライトで私はすっかり憔悴した。

5回連続で「マッド・マックス~怒りのデスロード」を観、「アナ雪」とジョージ・クルーニーの「モニュメント・マン」を鑑賞することで何とか時間を潰したが、「私は冷蔵庫の野菜か」というほどの冷気を当てられて、すっかり喉を傷めてしまったのである。

日本から持参したマスクとのど飴程度では太刀打ちできなかったので、ミラノのリナーテ空港に到着した時には私はすっかり不機嫌になり、ベイ夫を右往左往させることになってしまった。

ミラノ・リナーテ国際空港に降り立つと、当然だが入国審査がある。

もちろん私は善良な一般人なのでキチンと入国審査を受けたのだが、この入国検査がいい加減なことこの上ない。

入国審査官は(パッと見)若いお兄さんだったのだが、

「君たち、テロの危機に直面しているんだろ?」

と、日本国民一億強の中でもマックスいい加減な部類に入る私でもびっくりする適当さなのだ。

私が着けていたパスポートケースホルダーがヨーヨー式で伸縮するのだが、これをみて

「オー、ジャパニーズヨーヨー!」

と終始伸縮させて遊んでいた。

そしてロクすっぽ精査せずにあっさりスタンプを押してウィンクしてきたのである…。

そりゃあ見た目が中東系でもなけりゃヒジャブも着けていない日本のパスポートを持った平たい顔族の女*5など、テロリストである可能性は限りなくゼロに近いが、一応世界は厳戒態勢なのだ。

もうちょっとしっかり審査しましょうよ…とすっかり出鼻を挫かれてしまったが、それでも無事にイタリアに着いたのである。

現地時間で18時、空港が一番込み合う時間帯だったが。

f:id:umin_chu:20160106211104j:plain

ガラ空き…。

リナーテ空港はローマのフィウミチーノ空港とならぶイタリアの玄関口と聞いたが、全然旅行客がいないのだ。

そりゃあテロで渡航自粛している人が多いとはいえ、ビジネス客さえもまばら。

腐っても国際空港なので武装警察が警戒しているかと思えば、ガードマンの姿さえない。

…本当に、いい加減な国なんだなあ。

と変なところで感心したところで、私のイタリア見聞録がスタートしたのだった。

 

 

 

*1‥Wikipedia先生参照。

*2‥Wikipedia先生参照。

*3‥コトバンク参照。

*4‥コトバンク参照。

*5‥漫画「テルマエ・ロマエ」参照。

世界の大勢を全く鑑みずに海外旅行してみた話~序

昭和天皇が「もうこれは無理」と賢くも御聖断をお下しになられ、

「朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク」*1

と8月15日に玉音放送を流して70年後。

すっかり平和ボケした日本国民の一人である私は、世界の大勢を全く鑑みず、2015年11月13日のパリ同時多発テロで緊張が走るヨーロッパに旅行に行った。

行先はイタリア。

愛の国イタリア。

太陽の国イタリアである。

一緒に向かったのは私の夫であるベイマックス似の日本人男性(以下ベイ夫)。

ベイ夫が嫌だと言えば中止も吝かではない、むしろ妥当であると感じていたのだが、

「テロには屈しない」

という無暗矢鱈にカッコイイ台詞とともに決断してしまわれたので、1980年代の少年ジャンプ魂を受け継ぐ者として、うっかり決行してしまった。

その時の独断と偏見による観察結果を綴ってみる。

 

事の起こりは2015年初夏。

私は日本の地方都市の古臭い社宅で足をバタバタさせながら駄々をこねていた。

「イタリアに行きたい!イタリアに行きたい!」

そもそも家庭婦人(←になるべく躾を受けていないので、専業主婦というポジションにも適応することが出来ず、社宅妻としても落第で、当時日雇いで通っていたパート仲間にも馴染めず、フラストレーションを溜めていた。

ある一定年齢以上の道民がフラストレーションがたまった時の対処法と言えば、一つしかない。

そう、「水曜どうでしょう」*2を観るのである。

ちょうどその頃、某地方局で「水曜どうでしょう」の「ヨーロッパ20か国完全制覇~完結編」が放送されており、私の数少ない心の慰めであった。

そして、思いついたのである。

「イタリアへ行こう!イタリアへ行って、世界遺産を観て、緩んで来よう」

私はそれを心の支えに日雇いに励んだ。

そして、イタリア旅行ツアーのパンフレットを見ては現実逃避することで、日々をやり過ごしていたのである。

そして、お値段も手頃で旅行日程も都合の良いツアーを見つけた。

行先はミラノ→ベネツィアフィレンツェ→ピサ→ローマ→ナポリバチカン

北から入って南から出る、よくある某有名旅行社の添乗員つきツアーだ。

そりゃそうである。

英語はともかく、知っている現地イタリア語が

「チャオ」

「グラッツィエ」

「ペルファボーレ」

しかない、ダメな夫婦が単独で行くのは正真正銘の自殺行為だ。

馬鹿が海外で無理をしてはいけない。

安全にお金をケチってロクな結果が出た例が人類史上あっただろうか?

いや、ない(反語表現。

2013年末に日本中の笑い者になってしまったエクアドルの事件も*3、結局は被害者男性の慢心によるところが大きかった。

命の価値も安全も結局は相対的なもの。

我が日本は1977年のダッカ事件における福田赳夫首相以来、「人命は地球よりも重い」が(一応の)国是となってはいるが、世界にはたった10ドル、20ユーロのために殺人が起こる地域だって存在するのだ。

自分の力が及ばないなら、お金で能力を持つ人のヘルプを買うしかないのである。

 

結論として、イタリアでは大変快適な旅を楽しむことが出来た。

しかし、安全を買っておいて良かったと心の底から思ったことも事実である。

 その経緯なども、次の記事で書いてみようと思う。

 

 

 

*1‥玉音放送 - Wikipediaより引用。

*2‥公式サイトはこちら。

*3‥エクアドルを新婚旅行中に襲撃される 夫は死亡、南アメリカに横行する「特急誘拐」とは何か?より。